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SNVOX
中川創一の声と音楽
ベルカント唱法の概要
について
1.1 ベル・カント唱法の理想
1.2 ベル・カントの基礎原理
1.3 実践方法
1.2.1 メンタル・コンセプト
1.2.2 声区
2. 「自然で無理のない歌い方」と
リードの歌唱に関する考えとの関わり
発声をお教えするにあたり、大切にしている基本的な考えとして、
コーネリウス・L・リード著「ベル・カント唱法 その原理と実践」があります。
皆様に発声するにあたり、ご参考までに
「茨城大学教育実践研究 コーネリウス・L・リードのベル・カント唱法の 音楽科教育導入に関する考察
三 次 摂 子* ・藤 田 文 子」の一部をご紹介いたします。
1 コーネリウス・L・リードによる『ベル・カント唱法 その原理と実践』について
1.1 ベル・カント唱法の理想
ベル・カント唱法は 17~18 世紀に確立された,自然の法則と完全に合致した原理を基盤とする発 声システムであり,それによって生徒一人一人がそれぞれの才能に応じた上達をすることができた。 その理想とするところは美しい歌唱であり,発声のメカニズムが正しく機能している,つまり発声 メカニズムの作用が制御されていて美的原理と自然の法則との間に完全な調和が成り立っている場 合に可能となる。声が十分に自由で,声が広い音域にわたって真に共鳴しており,最強音から最弱 音まで完全にコントロールでき,楽にしなやかに演奏できることを目指している。 発声のメカニズムが持っている可能性を最大限に役立たせて正しく使われた声はすべて美しく音 楽的に響き,声のしなやかさと音域の広さはバランスの整った声区関係の中に共鳴を生じ条件が満 たされている結果である。 また「響く」声は強弱の変化が声域全体にわたってスムーズに平均して行われており,それに対 して「うるさい」声はボリュームのほとんどが声域の上中部に限られ,母音の音色を変化させたり 雰囲気や気分を醸し出したりする事ができない,過度の酷使と強制によるものである。 現在は声を<使う>ことが<酷使する>ことになっており,50 才で声を悪くしてしまう声楽家も 少なくない。これはベル・カントの基礎原理が一般に知られ,応用もされていた時代にはあり得な いことである。“発声配置”“鼻腔共鳴”“ブレス・コントロール”“呼気上歌唱”といった事実に基 づかない曖昧な概念や,正しい歌唱に伴う<徴候>を正しい歌唱をもたらす<原因>と誤った認識 による薄弱であやふやで紛らわしいものを頼りとする指導など,極端に矛盾しあった多用なメソー ド間違ったテクニックや指導法が横行しているため,耐久力のある有効な発声技術を習得すること が困難となっている。
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